スケールとアルペジオ
少し前のことになりますが、今年の1月半ばから2月にかけて日本に一時帰国していました。
その際、以前日本の教室でレッスンを受けてくれていた生徒さんを
短期間ではありますがレッスンする機会がありました。
6年前は小学4年生だったErikoちゃん(偶然にも私と同じ名前です)も、高校生になっていました。
私の渡米後、Erikoちゃんはピアノレッスンに通うことを辞めてしまったのですが、
ピアノは好きで自分で弾いて楽しんでいるようでした。
高校入学後、何度かまたレッスンに通おうと考えたこともあったそうなのですが、
学校のブラスバンド部で忙しいことやなかなか新しい先生のところに行く勇気が持てず、
なかなか行動を起こせなかったようです。
そんな中、一時帰国中の私と、偶然ダイソーでバッタリ顔を合わせたこと。
お母様にも「良いきっかけでは? 少しやってみれば。」と背中を押してもらったことで
レッスンがスタートしました。
「毎日でもレッスンしてほしいので、先生の空いている日を教えてください!」ということで、
結果的に3週間ほどで14回、レッスンをすることになりました。
かなり久しぶりのレッスン。しかも時間はわずかしかない。
こういうケースでの指導は私も初めてです。
最大限の効果を得るにはどうしたらいいか私も考えました。
〇 自分が好きな曲、弾いてみたいと思っていた曲を練習する。(少し無理めでも)
〇 個々の指を独立させる訓練をする。
〇 たくさんの音を鳴らす中で、大事な音を見つけるコツを伝える。
〇 自分がどう弾きたいかを常に意識する考え方のポイントを伝える。
この4つを軸に3週間のレッスンを進めました。
高校一年生のErikoちゃんの選んだ曲は、葉加瀬太郎の霧島とドビュッシーの月の光。
霧島はテンポもゆっくりで譜読みもあまり難しくありませんが、テーマの繰り返しが
比較的多い曲になっています。
こういう曲はさらっと弾いただけでは音楽になりにくくなっていますので、
どういう曲なのかという分析と自分はどう弾きたいかを考えることが必要です。
楽譜通りに弾いてみて、どんなメロディーが聞こえてくるのか、どこにどんなハーモニーが
あるのかを宝探しのように見つけて、
2人で相談しながら、Erikoちゃんが ”うん、この感じ!” と感じる演奏を目指しました。
演奏者が ”これ!” と感じる演奏ができた時、本人はもちろん、
聞いている私にも ”これね!”と わかります。
演奏者の理想とする迷いのない演奏、素敵です。
もう1曲の月の光には速いパッセージの連なる部分があります。
ここを気持ちよく弾くには、テクニックが必要になってきます。
指が早く動くこと。アルペジオのレガート奏法。
この2点に関しては、聴くこと、考えること、感じることの前にまずテクニックです。
ただ不規則な音の並びではなく、3和音、または4和音のアルペジオが連続しているだけなので、
しばらく弾き込めばパッセージを流れるように弾くことは難しくないんです。
でもErikoちゃんはとても難しそうでした。。
そうなんです。彼女はスケール、アルペジオの訓練をしていなかったんです。
専門的に進むつもりのない生徒さんでも、小学校高学年や中学生になってもピアノレッスンを続け、
弾いてみたい曲も少し高度なものになってくる頃には、多くの生徒さんには不評ですが必ずスケールやアルペジオの練習を取り入れて、
スムーズで楽な運指を勉強しています。
そして、今回それをしなかった場合に初めて遭遇し、私も改めてそれらの重要性に気づかされました。
今まで必要だと信じてレッスンにスケールとアルペジオの練習は取り入れてきましたが、
やっていなければこういう苦労がのちにやってくるんだな、と実感しました。
もちろんErikoちゃんのように、実際に曲の中で出会ってから練習をしても良いのですが、
いつかレッスンに通わなくなって、自分で曲を弾いてみたいなと思った時にも
基礎をしっかりしていたおかげで苦労することなく曲を楽しめたらうれしいですよね。
生徒さんの音楽の引き出しが少しでも増えるように、これからも指導していきたいと思います。
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